〜森 正夫の山歩き記録〜
第8回 榊山(さかきやま)1257mと海遠点(1200m)        2014.9.2

 榊山は、日本で海から最も遠くにある地点を象徴する山である。海遠点そのものは榊山の手前海抜1200m地点にあり、最も近い海岸まで直線で114.853km(国土地理院)あるとされている。この地点が佐久市(旧臼田町)にあるとなると、やはり人情として登ってみたくなる。また、登山道へと向う県道93号線は五郎兵衛新田を開発した市川五郎兵衛の出生地、群馬県の南牧村へ通じ、江戸時代初期には両地域を結ぶ交通の要衝でもあった。

 榊山への道は、雨川砂防ダム湖を過ぎた右手から始まる、熊出没注意の立て札が2本貼られている。この先の林道は一般車通行止となる。近辺の空地に車を停め歩き始めよう。沢筋に沿った道は快適で、沢から吹き上がる冷気が心地よい。周囲の樹林も夏の陽ざしをさえぎり楽しい歩きとなる。30分程で林道終点に到着し、ここから登山道となる。しばらく歩くと登山道は途切れ途切れとなり、細い沢を右へ左へ渡り返しながら高度を上げていく。沢筋中間点あたりから道はほとんど無くなり沢歩きとなる。これはこれで心地良いが、一般的なガイドブックでは、海遠点まで整備された登山道が続くとされているので注意が必要だ。登山道に掛けられたであろう丸太などが沢の中に落ちているところを見ると、既に登山道は流されてしまったとしか思えない。倒木なども多く、足元が危ない箇所もあるので、しっかりした装備での入山が望まれる。また、雨の降った後の入山は控えたほうが無難だ。海遠点は沢の源頭に湧き出る水流を過ぎ、少し登ったところにあり、広く緩やかな斜面になっている。

 榊山へは、ここから少し先のピークから、広い尾根通しの歩きとなる。ところどころにテープや赤いプレートがつけられているので、それを頼りに進む。ただし、道はあまり歩かれていないため落葉や腐葉土で解りにくく、獣道との判別が難しい。注意したいところだ。榊山の三角点は樹木の中にあり展望は望めない。海遠点の三角点を踏んだという満足のもと、引き返すことになる。

 この帰り道に注意しよう。尾根すじが広く、いくつかの似たような支尾根が左右から上って来ており、一見してどこへ下るか迷いが生ずる。赤いプレートを見つけながら下ることになるが、数が少ない。遠目でよく確認しつつ歩こう。いろいろなテープが貼られているが、来た道とは別のルートのものが多くあり、下手をすると迷いの原因になりかねない。3分、長くても5分歩いて、どうもおかしい、と思ったら必ず元の場所に戻り、現在地を確認することが大切だ。榊山を目指す登りの途中で、要所要所下り道の方向を確認しつつ進むことが必要だと思われる。

 登山に要するコースタイムが短く、海遠点という宣伝効果もあり、またガイドブックによっては、子供やお年寄りも気楽に登れると案内されているものがあるが、現状では大きな誤りである。海遠点が発表された後、佐久市(旧臼田町)が一度は登山道を整備したと思われるが、その後、長い間手が入れられず、荒れてしまったのであろう。

 このコースは、心地良い沢と豊かな自然林の中を歩く楽しい山歩きが担保されるが、反面、しっかりした装備と心構えが必要な山である。

   <アクセス>
   国道141号を臼田で標識に従い県道93号線へ入り、田口峠へ向う。
   砂防ダム湖を過ぎたら「海遠点入口」の標識を見逃さずに。(少々見にくい)
   標識どおりに右折し、小さな橋を渡れば左側に林道と車止めが見える。

   <追記>
   登った後(2014.9.3)、佐久市役所(臼田支所)に電話し、登山道がだいぶ荒れていることを報告し、
   その旨を観光案内やゲート入口に標示するよう提案しておいた。




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