〜森 正夫の山歩き記録〜
第19回 大出山(おおいでやま)1,594m 2015.11.5

 国道142号線を和田トンネルへ向かい旧和田村に差し掛かると、左側の山々の中に長い尾根を従えたひときわ高い山が目に入る。これが大出山である。和田村はかつて中山道の宿場町として栄え、皇女和宮が興入れの際、本陣に泊まっている。国道から旧道に入ると、その本陣をはじめ古い街並が残っている所があり、ゆっくりと歩いてみるのも楽しい。

 私は幾度となくこの道を通っていて、いつかは登ってみたいと思い続けていた。しかし、登山道が不明瞭で道迷いの危険性が高く、地元の方からもあまり登ってもらいたくないという話を耳にしていたため躊躇していた。そこで、今回一人より二人なら心強いと友人を誘い、ようやく登ることにした。事前に駐車場所を確保するため、登山口にある赤倉オートキャンプ場に連絡したところ、とても親切なアドバイスを受け、当日も心配そうに見送って頂いた。

 登山後の結論からいうと、この山には登山道は無いということだ。登山ルートの案内をしているガイドブックもあるが、今は通用しない。従って、頂上へ続く長い尾根にたどり着くには、30度以上の道のない急斜面をどこかで登りきらねばならず、かなりしんどい。私たちは、キャンプ場から500m程林道を進んだところの5本目の作業道に入り、途切れた所から落葉の積もったすべりやすい急斜面を登った。標高差はほぼ150m程であったろうか。

落葉の積った尾根すじ 大出山頂 山頂周辺


 尾根に出ると意外にすっきりしていて、葉の落ちた樹木の間から周囲の山々が見え明るい。踏み跡など判別できるものは無いが、尾根すじははっきりしていて迷う心配はない。あとはひたすらかなり急な尾根すじを登りきるだけだが、落葉した尾根はやわらかく、周囲の山々を眺めながら歩けるため気持ち良い。何ヵ所か尾根すじが広くなり左右から支尾根が上ってきているが、赤いテープなどがつけられているため注意を怠らねば下山時でも迷う心配はないだろう。ポイントは周囲の景色を確認することだ。

西側にそびえる三峰山と
美ヶ原へつながる稜線
北側に遠望する浅間連山 東側に望む八ヶ岳の一部

 尾根すじからは、だいたい東側に八ヶ岳(蓼科山など)、西側に美ヶ原の稜線、北側に浅間連山が樹林の間から望める。位置関係は見る場所によってズレていくが基本は変わらない。いつでもこれらの山々が同時に見えていれば正確に尾根すじを歩いていると思って良いだろう。従って登山時期は葉が落ち、下草が枯れ、雪の降る前ぐらいが適期である。

 頂上には、山頂を示す標識などは一切無いが、直下にしっかりした東屋が設置されていて日当たり良く食事をとるのに都合が良い。周囲は急な尾根すじを登ってきた割には広く、ゆるやかな傾斜の雑木林が南側に広がっていて、下は背の低い笹が密集している。

 いつかは登りたいと思い続けていたので登頂後の満足感はひとしおで、急な下り道も苦にならず、現役バリバリで足の早い友人の後を追いかけ、引き離されながらも1時間程で下山することができた。

 下山時に気づいたが、キャンプ場の近くに熊用の鉄製ワナが仕掛けられていたところを見ると、ここも生息域なのであろう。

 昔ながらの宿場町の中に雄然としたたたずまいで鎮座して、自然のままの自然を残している貴重な山である。



   <アクセス>
   国道142号を塩尻方面に向い、長和町和田の集落に入ってから鍛冶足交差点を左折して、
   キャンプ場の案内に従って進めば数分でたどりつく。


   <注意@>
   ガイドブックによっては、登山口からの標高差が約400mと標示されているものがあるが、
   実際は200m以上高く、650m前後はあるだろう。

   <注意A>
   尾根の末端がキャンプ場のすぐ近くまで来ているようだ。林道に入ると、すぐ戻るように登っていく作業道(最始に出合う作業道)が見える。
   もしかすると、この道を登って行くと最も早く尾根に出られるかも知れない。
   確認はしていないが、帰宅後、1/25,000図を見ているうちに気がついた。確認してみる価値はあると思う。




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