〜森 正夫の山歩き記録〜
第13回 西上州の山々 その1  〜 1周年記念 〜
       笠丸山(かさまるやま) 1,189m  物語山(ものがたりやま) 1,019m


 西上州(群馬県)と佐久地域は隣り合わせである。荒船山や榊山をはじめ、いくつかの山頂が両地域にまたがっている。国道254号は下仁田町から富岡市に通じ、国道299号は上野村へと入っていく。また両国道の間にある県道93号線は南牧村へと通じる。一般的に西上州と言われる山域は、多くがこれらの道沿いの両側に位置する山々のことである。これらの山々は妙義山に代表されるように、標高はあまり高くないが岩山が多く、絶壁や岩峰が林立する姿は見事である。

 また、一般の交通機関を使うと、奥深いため日帰り登山はかなり難しい。私も東京や横浜に住んでいた頃、幾度となく通ったが、2泊前後の山旅が多かった。

 佐久に移り住んで、西上州がこんなに近くにあることに驚き、車を使えば、日帰りも苦にならないことが不思議に思えた。さっそく、いくつかの山に再挑戦してみたが、年齢を重ね体力も衰えた身にはかなりきつい事が多い。コースタイムは短くても技術的に難しい箇所が多くあるからだ。

 しかし、西上州ののどかな山里の風景にそびえ立つ岩峰を見ると、どうしても登高意欲をかき立てられてしまう。安全に留意しつつ、今後はこれらの山域をこまめに歩きなおしてみたいと思っている。


 笠丸山(かさまるやま) 1,189m     2014.10.17

 西上州の神流川沿いにある山々の中で、笠丸山は標高が低く、比較的短時間で登れる山という印象をもっていた。登山口へも、住居附(すもうづく)川沿いの道が舗装されているので、車を使えば簡単に行くことが可能だ。

 ところがいざ登ってみると、かなりしんどい。初めから最後までかなりの急登がつづく。最初は、うす暗い檜林の中の所々木製の階段が残っている急坂をこなしていくが、尾根上に出ると広葉樹の雑木林に変る。しかし、急坂は増々その斜度を増し、木の根が多く露出し、赤土に小石の混じった道はすべりやすく、特に下山時には注意を要する。いくつかのピークをこなすと最後の急登が待っている。ここには木々を利用してロープが張られている。ありがたいとは思うが、こうしたロープは案外歩きの妨げになる場合があり、バランスを崩したり、足をひっかけたりすることもあるので気をつけなければならない。

 この日、私が持参した地図は、1994年版の古いもので、頂上標記が東峰と西峰に分かれていなかった。そこで、最初に辿りついた東峰に「笠丸山山頂」と書かれた標識があり、眺望に勝れた西峰に足を向けなかったため、残念な結果になってしまった。
 
 帰りには、地蔵峠経由で下山する予定にしていたが、本来、東峰と西峰の間にあるはずの地蔵峠への道が見つからず、あちこち探しまわった挙句、来た道を戻る羽目に陥った。
 
 これは、大いなる失敗談。長い年月のうちにため込んだ地図やガイドブックはかなりの量に達している。過去に登ったことのある山ならともかく、少なくとも初めて登る場合は最新のものを手に入れるべきだと、つくづく反省している。
笠丸山の頂に祠 田口峠(佐久と西上州の境)にある展望台 頂上から天丸山方面を望む


 山頂には大き目の祠が祭られていて、中に小さな鉄剣が奉納されていた。眺望は南面に開かれていて、天丸山など西上州の山々が見渡せるが、他は雑木が繁っていて山名の判別は難しかった。

 西上州の山々に共通することではあるが、安易な気持ちでの入山は控えるべきだと改めて感じた山であった。


 物語山(ものがたりやま) 1,019m     年月日不詳

 山名について考えると面白い。同じ山名を持つ山は日本中いくらでもあるが、山名が2つとない山は私の知る限り西上州の「物語山」と日光の「夕日岳」だ。特に「物語山」は何とも言えぬ情緒を感じさせ、そこに秘められた物語を山の様子から知りたい、という願望がわいてくる。40代後半の頃だったか、地図を見ているうちに見つけ、荒船山に登った翌日立ち寄った。

 バス停から市ノ萱川を渡り丹沢添いの林道を歩いて行くと、前方に物語山とメンベ岩が見えてくる。林道が終り登山道に入る地点で、熊注意の立て札が立っていた。標高は低いがここからは急登がつづく。小尾根を越えて少し行くと、薄い岩が折り重なるジグザグの道となる。この急登をこなしていくと、ひょっこりと頂上と西峰の鞍部に着く。右側の斜面を登ると三角点のある物語山山頂だ。鞍部に戻り、西峰に向かう。西峰の展望は良く、妙義山や浅間山なども見渡せる。

 ただし、急坂に次ぐ急坂の降りは意外と時間を要す。あせらずゆっくりと歩みを進める余裕が大切なところだ。

 この山が物語る話については、いろいろ考えてみたが、まとまりがつかないままである。後で知ったことだが、戦国時代の敗将がメンベ岩のどこかに財宝を埋蔵したという伝説についての物語から来ていることであった。真偽はともかく、人の心をワクワクさせる山名であることに変りない。





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