空即是進化さん 自分の葬式のお経をどうするか 2012,4,26,

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曽我逸郎 様

初めまして。空即是進化と申します。ほぼ10年近く貴サイトを閲覧させていただいております。

私は○○学会系列の大学を卒業し、某県の地方公務員をしてますが、そろそろ定年です。

私なりに宗教を探求してまいりましたが、20数年前に○○学会を卒業。その後△△の科学を少し覗いたが、すぐ底が見えて退学しました。しばらく彷徨ってから、貴サイトや佐倉哲さんのサイトにたどり着きました。

お陰様で「無常・無我・寂静」についてほぼ納得したつもりでいます。死ぬのはまだ嫌ですが、それほど恐怖は感じません。

人間一人一人がどれほど稀有で貴重な存在であるか、また、この時代に日本に生まれ育ったことの幸運を、心底感じております。

さて、このたびのタイトルですが、実は○○学会や□□正宗を卒業してしまったために、いざ自分の葬式をどうするか、迷っております。家族にもどうするのかと迫られておりましたので、つい、「私が新しいお経を創る。それを坊さんの代わりに友人か親しい人物に読んでもらおうと考えている。」と言ってしまいました。家族はあまりのことにあきれてましたが、半分本気で、今後10年ぐらいかければそれらしいものができるのではないかと考えました。

しかし、実際考えるととんでもない話でありまして、そこで曽我さんにお願いできないだろうか、ということであります。

曽我さんなら、すでに構想を創っているのではないかと考え、メールした次第です。

大変ずうずうしいお願いですが、ヒントなどをいただけたら幸いです。

 

曽我から 空即是進化さんへ 2012,5,3,

前略

 お葬式についてメールを頂戴しました。有難うございます。

 確かに、お葬式は難しい問題です。『ブッダ最後の旅』岩波文庫(中村元訳大パリニッバーナ経)p131を見ると、「ご遺体をどうしたらよいか」と問うアーナンダに、死期の近づいた釈尊は、「お前たちはかかずらうな。正しい目的に専念しておれ。王族、バラモン、資産者の賢者たちが遺体の供養をなす」との旨を答えておられます。出家の弟子たちに遺体供養に関与することを禁じられた訳で、だとすると、釈尊の教えは、葬儀には関係しないものだったのかもしれません。

 私は、お葬式に参列した時や、道路で死んでいる動物を見かけた時には、「怖かったね、でも大丈夫、心配することはないよ、力を抜いて、ほどいて、広げて・・・」と心の中で念じています。私の理解からすれば、私たちというそのつどの反応が縁起するところの色身が機能を停止すれば、私たちという反応も起こらなくなる(色身の機能停止後も残るような「我」はない)、と考えるので、理屈の上では矛盾した行いではありますが、まあ一応念のため、よじれて固まったままの小さな執着でもあればいけないので、すっかり広がりほどけるように、と祈ります。いや、亡くなった命のためというより、私の中のいたましい感覚をそのままにしておくことができず、自分の痛みをほぐすために、広く伸びやかな寂滅を願うのかもしれません。

 母が亡くなったときは、ゆっくりと時間をかけて呼吸が力を失っていき、なんどもこれが最後かなと思う息が繰り返されて、やがてついに終わりました。その間、ずっと手を取って上のようなことを心の中で呼びかけていました。そのおかげで私の気は済んだし、母にも格別の信仰はなかったので、お坊さんを呼んでのお葬式は改めてしなくてもいいと思いました。葬儀屋さんの助けを借り、隣組の皆さんに見送って頂き、火葬し、後日隣組の皆さんにこれまでお付き合いをいただいたお礼の席を設けました。遺骨は、大阪天王寺の一心寺に納めました。

 私の住んでいる辺りでは、お葬式は、家族というより隣組中心で執り行われます。昔、日本には村八分という制度があって、村八分でも葬式と火事の対応は別だったと言いますが、おそらく日本の大抵の場所で葬儀はかつて隣組主体で行われており、私の今住んでいる村ではそれがまだ続いているのだと思います。
 つまり、葬儀は、亡くなる本人の実存の問題以上に、見送る家族・友人・地域コミュニティなど周囲の側への配慮が大切かと思います。死んでしまえば、当の本人はもういないのですから…。自分の譲れないところにはこだわりながら、見送る側の気持ちの整理や、世間体や、コミュニティの円滑な流れなどにも気を遣うことが必要かと…。

 私自身については、HPに「遺書」というのを掲載していて、遺体は医学生の解剖実習のための献体に、と書いていますが、これも思いつきのようなものですから、いろいろなことをもう一度きちんと考えた上で書き直さねばならないかもしれません。

 返答にはなっておりませんが、思うところを書きました。ご検討の参考になる部分があれば幸甚です。

 またご意見お聞かせください。
                                   草々
空即是進化様
         2012年5月3日                   曽我逸郎
 

 

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