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既存客の価値を見直そう
既存客への活動を本格的に見直す動きが出てきています。新規客に目を奪われている隙に、既存客を失うことが起きているからです。優良企業と言われている会社ほど、既存客を今まで以上に大切にしようとしています。
それは、新規客開拓のコストが急騰しているせいでもあります。一説によると、新規の見込み客を探し出して契約するまでの一件当たりの営業コストは、同じ一件の既存客を維持するコストの20倍はかかると言われています。
既存客はコミュニケーションをとりやすいため、売上以外にも様々な恩恵を自社に与えてくれます。下記はその一例ですが、それにはお客への間断のない接触と、お客へのメリット提供が必要であると考えます。
新規客の開拓 ≦ 既存客の維持
【既存客の維持は新規の開拓と同じかそれ以上大事】
理由(一例)
コストパフォーマンスが高い
情報収集、満足の証言が得やすい
友の会など組織しやすい
販売促進に先手が打てる
紹介客が増える(セールスしてくれる)
条件(一例)
体系だった綿密な顧客管理
定期的な顧客の棚卸し
メンテナンスフォローのシステム化
継続的な情報提供
既存客のメリットの明確化
○顧客(既存客)の棚卸し
顧客の棚卸しとは、自社の顧客名簿を元に一客一客を洗い出していく活動です。机上だけで判断せず、お客に会いに行って目で確認する作業も必要です。特に、眠っているのか死んでいるのかなどは、現場に行ってみないとわからないためです。ここでは、『生きた客・眠った客・死んだ客』に分類して検討します。
(a)生きた客への対応
『生きた客』とは、現在、自社との取引継続中のお客のことです。
生きた客へはどんな営業活動を行うべきでしょうか。それには、組織だって取り組むことが重要です。仮に担当者がしっかり対応できていたとしても、営業事務の電話応対がまづかったり、他の部署の接客応対ができていなければ、元も子もありません。そこで、顧客情報を全員が把握できるようなデータベース化と、共有化の仕組みが、『生きた客』への最低限の対応ではないでしょうか。
(b)眠った客への対応
『眠った客』とは、自社との取引が途切れがちであったり、一定期間内において取引がないお客のことです。その原因を大きくわけると、営業側によるものとお客側によるものの二通りがありますが、営業側にしぼって考えてみます。
営業側の原因としては、営業に行けなくなった場合と行かなくなった場合とがあります。特に行かなくなった場合が問題です。相手の要求が厳しすぎるからなのか、相性が合わないのか、単なる怠慢なのか、本当の行かない理由を調べてその対策を打っておかなければなりません。そういうお客は、営業担当者をつけない『組織対応客』にするなり、担当者替えを行うのも一つの方法であると考えます。
(c)死んだ客への対応
『死んだ客』とは、お客が本当にお陀仏になったという場合もありますが、ある一定期間以上、自社との取引がないお客のことをいいます。
『死んだ客』への対応としては、なぜ取引が途絶えてしまったのかの『死亡原因』を明らかにすることが重要です。例えば、お客の求める特殊な商品を自社が扱っていなかったため取引がなくなったような場合、商品の取扱いが可能となった時点では取引再開となりうるからです。
その他、死んだ客への対応としては、当社との約束事があるのであれば必ず履行しておくことです。いつなんどき生き返るか、わからないからです。また、売掛債権の未処理などの残務整理は、取引がなくなってもやらなくてはなりません。むしろ、取引がなくなったがゆえに、余計にやらなければならないといえるでしょう。
○まとめ
既存客を見直すことは、その後のお客への対応の仕方に影響してきます。大事なことはいかに『死んだ客』にならないようにするかであり、顧客管理はそのためにあります。最初にも述べましたが、既存客の維持管理費は、新規客の開拓に要する費用の20分の1ですむと言われていますので、試してみてはいかがでしょうか。
参考文献 山口雅人『売れるしくみのつくり方』(日新報道 2003年)
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