岡崎 司さんより はじめまして 2003,3,23,

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

曽我様
はじめまして。岡崎 司と申します。小生は**在住の47歳の勤め人です。
工学部出身の技術屋で、特に信心があるわけではなく、普段はお釈迦様の教えとは一切関連のない世界に暮らしております。
このような小生が仏教に興味を持ったのは、約20年前の20代後半のころ、お経にはいったい何が書いてあるのかという興味が発端でした。
それ以来、目に付いた本を読むといったことが約10年続きました。
その後、仕事の関係で余裕がなくなったのと興味の対象が別の方向に向いてしまい(飽きっぽいものですから)仏教から遠ざかっていたのですが、最近少し余裕ができ、またボツボツと関連の本を読み始めたところです。
仏教について調べ始めたころから唯識の思想に興味を持っておりましたが、それでとばかり、唯識思想について、近頃はやりのインターネットで検索していて貴HPの存在を知りました。以来、興味深く拝見させてもらっております。
特に、系統発生の過程におけるに自我の発生や主体性について考察しておられるのを読み、なかなか優れたアプローチの仕方と感心し、普段はHPへの書き込みやメールを出すといったことはものぐさのためしないのですが、筆をとりました。

小生も、貴兄がHPのどこかに書いておられた「仏教用語を使わずに表現」ということにあこがれております。
まあ、小生の場合は自身の理解というか腑に落ちさえすればよいのですが。
現在、「あたりまえのことを方便とする般若経」の中の「あなたたちも、泉と同様に、ものが通り抜けていく場所なのだ。云々」という文言に刺激を受けて、仏教思想のシステム論的理解が可能ではないか思い、河本英夫氏の「オートポイエーシス」を参考書として、自我の成立を、貴兄のまねをして、系統発生の時間軸上で思いをめぐらせております。
また、このシステム論は唯識思想の理解のヒントとなるのではないかとも考えております。

それにしても、「主体性」という言葉は、久しぶりに故今西錦司博士の進化論を思い出させてくれ、やはり20代後半に博士の本をいろいろ読んだ記憶がよみがえり、非常に懐かしく感じました。
この影響から、小生は現在もダーウィン流の適者生存による進化の説明は信じており ません。
これはどうでもよいことですが。

それはそうと、ひとつ質問なのですが、貴兄は「縁起」ということを「原因から結果への時間的関係(に限定したい)」と書いておられますが、これは単純に解釈して「因果律が成立する」としてよいのでしょうか。
ひょっとすると貴HPを精読すれば説明されているのかもしれませんが・・・・。

今後も、貴兄の思想が多くの人の意見でBrush upされ、このHPが充実したものになっていくことを願ってやみません。

*************************************
*****************************
岡崎 司


岡崎 司さんへの返事 2003,3,26,

拝啓

 メール拝受致しました。ありがとうございます。

 オートポイエーシスについては、2、3冊読みましたが、日常的なものの見方に縛られて、なかなか理解がかないません。ですが、仏教(無我=縁起)に新しい角度から光を当ててくれそうな予感は感じております。
 唯識に対しては、どうも食わず嫌いになってしまっていますが、オートポイエーシス+唯識の視点で、新しい問題提起をして頂きたく、是非また刺激を分け与えていただければ幸甚です。

 縁起を時間的なものに限定して考えたいと申し上げた意味は、「右は左によって右となる」とか「父は子によって父となる」といった概念の対比関係については、当面は縁起の内には考えないでおきたい、という意味です。
 因果律という言葉はよく分かりませんが、「現在の世界の状態を完璧に把握できれば、無限の未来まで予測できる」というような古典的機械的決定論的プロセスとして縁起を考えているわけではありません。確率論的であれ、すべて現象は、その直前の近接した現象からの縁によって、始まり、変わり、終わり、また同時に周囲に縁を与える。このように考えております。
 カオス的世界においては、慈悲による行いも、かえって苦をもたらす事もあり得るとは承知しつつ、我々がもし十分思慮深くあれば、少なくとも不注意によって苦を創り出す事は減らせるだろうし、最初から諦めて何もしないよりは、注意しながら世界をよくしようとするほうがよい結果をもたらすだろうと考えています。

 今後の御成果を皆で共有できるようにして頂ければうれしいです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。
                                 敬具
岡崎 司 様
      2003,3,26,
            曽我逸郎

意見交換のリストへ戻る  ホームページへ戻る  前のメールへ  次のメールへ