誰が為に鐘は鳴る(ラストシーン)

 この映画は、1936年、スペインで起きた内乱に題材をとったヘミングウェーの小説「誰が為に鐘は鳴る」を映画化したものだそうである。私は原作の小説を読んでいないので、筋立てがどの程度忠実に反映されているのか勿論全く分からないのだが、主人公のアメリカ青年ロバルト・ジョーダン(ゲーリークーパー)が何故スペインの共和派に入ってその戦いを支援しているのか、何故そうせざるを得ない心境になったのか、あるいはまたスペインの内戦がどのような時代背景と意味を持っているのかというよなことがこの映画からは読み取ることが出来ないのである。ただヒロインのマリア(イングリッド・バーグマン)の両親が、敵対するファシスト派によって殺され、自分自身も悲惨な経験をしたということをロベルトに告白する場面で、国全体がのっぴきならない内戦の渦中にあるらしいということをうかがい知るといった程度である。

 ロベルトは谷合いにある橋を爆破せよという命令を受けて山岳地帯にやって来た。ゲリラと合流し作戦を実施すべく活動するが、その中でマリアと出会い、二人は熱烈な恋におちいった。このあたりも何となく分かり難い進行のような感じがしてならない。

 10人足らずのゲリラ達の頭目に対する不信感や作戦の齟齬等が描かれてはいるが、二人の愛情の進行が中心となっているので、橋の爆破に至るまでの推移や、その結果の効果に今一つ迫力を欠く感があるのは止むを得ないような気がするのである。

 橋を爆破して撤退する時に、ロベルトは足に銃撃を受け馬に乗ることが出来なくなり、撤退を諦め仲間の逃走を助けるためその場に残ることを決心する。マリアは彼一人を残してその場を立ち去ることは出来ない、自分も一緒にいたいとロベルトに迫るが、ロベルトは彼女を説得して仲間と共に去らせる。そして自分は死んで行く。
 
 内乱とそこに生きる二人の男女の愛の哀しさ、切なさなどを実感として感じ取ることが私には出来ないが、シナリオ作者、あるいは監督などが原作の主題を取り違えてしまったのではなかろうかと推定するのだが如何なものであろうか。(誰が為に鐘は鳴る)(00/11/19)

(現金に手を出すな)