地の果てを行く(ラストシーン)  

 ラッパが鳴り「第3中隊先発隊員点呼」という指揮官の声が響き渡る。その声に応じて現れたのはたった一人生き残ったスペインの外人部隊兵士リュカだけである。上半身裸で、右手に銃を持ち、直立不動の姿勢で一人立っている姿は壮絶としか言い様がない。

「隊長ウエラー!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「戦死」
「傭兵アンフイラ!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「戦死」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「1等傭兵ジリエ!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「戦場にて伍長に任命され戦死」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次から次へと名前が呼び上げられ、その度にリュカの「戦死」と答える声が周囲の山に反響して消えて行く。点呼終了後、部隊全員で「捧げ銃」をした後、戦死者が並べられている傍を、軍旗を先頭にラッパを鳴らしながら行進して去って行く。24名の先遣隊員達の生と死を分けた運命の非情さがひしひしと胸に迫ってくるシーンである。
 
 パリで殺人を犯したジリエ(ジャン・ギャバン)は警察に追われ、スペインのある町へ逃れて来たが、そこにも追求の手は伸びており、しかも酒場で有り金を全部盗まれてしまった。途方に暮れた彼の目に入ったのが外人部隊隊員募集の一枚のポスターである。外人部隊に入隊すればそこでは一切過去を問われなくて済む。
 暗い過去を持った国籍や人種の違う人間が集まった外人部隊。このような中でジリエは二人の傭兵と知り合った。その内の一人が彼を追いかけてきた警官のリュカ。ジリエに殺された人間の家族が5万フランの懸賞金を懸けていたのである。

 リュカが自分を追いかけている警官であることに気付いたジリエは、彼を呼び出して殺しかけたが、殺しはしなかった。

その後、原住民の反乱が起こり、砦の守備要員として24名の決死隊の中にこの二人も派遣されるが、包囲網の中で隊長以下の22名は戦死し、残ったのはジリエとリュカの二人だけになってしまう。いよいよ自分達にも最後の時が来たと覚悟を決めた時にラッパの音が聞こえ、救援部隊が来るのを知った二人は手を取り合って喜び合う。そして極限の中で生き延びることの出来た嬉しさの中で不思議な感情が生じ、二人はそれまでの憎しみを捨て去り、人間の生きる喜びを分かち合うのである。しかしその瞬間ジリエが敵弾にあたり戦死してしまう。

 部隊が移動するときに、ラッパ手を先頭に鼓笛隊が続き、一見勇壮に聞こえる軍楽隊の演奏が何とはなしに悲しい響きに聞こえて来るのは、外人部隊を扱った映画に共通する想いである。何らかの原因で社会を捨て、生命の危険にさらされる環境に自ら飛び込まざるを得ない人間達の唯一の憂さ晴らしの場所は酒場である。その酒場でふと知り合った女達との恋をめぐって様々な人間模様が描き出される。全てを捨ててしまったつもりの人間に、また違った世界が待っていて、そこで再び人間として苦しみ悩むかのように思われるのは悲しいことだろうという気がする。(ラストシーン(11))(00/09/17)

(望  郷)