地下室のメロディー(ラストシーン)
プールの底に沈んでいた鞄の口が開いて、無制限とも思われる数の紙幣が次から次へと水上に浮き上がって来て、やがてプール全体の表面全体を覆い尽くそうとしている。綿密な計画を立てて首尾良くカジノの金庫倉庫から強奪した10億フランの紙幣なのである。プールサイドのテーブルに腰掛けてなす術もなく呆然とそれを見つめているのはジャン・ギャバン扮する強盗の首班シャルル。もう一人プールサイドに寝そべって予想外の展開にしぶい表情を見せているのは、刑務所に居るときに知り合った若いニヒルな若者のフランシス(アラン・ドロン)である。 思わぬ成り行きに途方に暮れている二人の心中を察すると滑稽ではあるがまた気の毒だと同情もしたくなる。しかし強盗犯人に同情するてはないだろうと冷たく突き離すとして、なによりもジヤン・ギャバンの風格あるギャングぶりに何とも言えない風格があり、思わず引き込まれてしまう。「大いなる幻影」の空軍中尉を演じたのもギャバンだが、まだ若い時代の彼の風貌は何となく馴染み難い気がする。ギャバンといえばギャングの親分のような雰囲気を醸し出している50才を過ぎた渋みのある顔つきのギャバンでなければならないと思うのである。 |
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(現金に身体を張れ) | ![]() |