灼熱の四国・九州

(長野県→岐阜県→愛知県→三重県→
奈良県→和歌山県→大阪府→兵庫県→
岡山県→香川県→徳島県→高知県→
愛媛県→広島県→山口県→福岡県→
大分県→宮崎県→鹿児島県→熊本県→
長崎県→佐賀県→福岡県→山口県→
島根県→鳥取県→兵庫県→京都府→
滋賀県→福井県→石川県→富山県→新潟県
攻略済みは灰色

東北攻略で力尽きた2CV。
もう2度と息を吹き返すことはない。
さっそく手放すことにした。
しかし、動かないのでは手放すこともままならない。
私は近所の車屋さんの「K老人」に2CVを託した。
K老人」のゴッドハンドは、
CVに必要以上の強靭な電気系を与えた。
K老人」は遠い南の空を見つめた後、静かに口を開いた。
「・・・・完璧じゃ」
見事によみがえった2CVを見た私は驚愕のあまりひざが大地をついた。
そして、このとき初めて「全都道府県制覇」を意識する。
1999年7月10日

CVは「南」に進路を取った。

遠い南の空のもとへ

私は自ら立てた計画に脅威した。
「東北でぶっ壊れた実績を持つ2CVで
九州最南端の佐多岬を目指す!
ついでに四国四県も制覇する!」

それはまるで、植村直己かリンドバーグか。
はたまたアムンゼンかガガーリンといった心境だった。
今度ばかりは生きて帰ってこれないかもしれない。
しかし、これで命が尽きようと悔いは無し。
私は部屋をくまなく掃除し、身を清めた。

テイク・オフ


CV旅仕様ファイナル・エディション。
棺桶になるかもしれないそれには
ありったけの全精力を注ぎ込んだ。

哀・戦士

三重県の長島温泉に到着。2CVとともに休息を取る。
時間的にもこの駐車場が今日の宿となりそうだ。


温泉を堪能した後、2CVを点検する。
するとワンボックス車に乗る老人が近づいてきた。老人は言う。
「若いの。どこからきた?こっちの場所の方が広いぞ。」
ん?確かに広いな。老人の示した場所に移動した。
老人は続けた。
「俺はずっとここに住んでいる。家はあるが帰っていない」
なぬ!?そういえば老人の車の下には砂が積もっている。
長いこと動かしていない証だ。
「そこにある車もお仲間のやつだ」
と、2CVの隣にあった車を指差した。
迷惑駐車なので撤去する旨が張り紙してあるこの車も、
長いこと動かした形跡がない。
「そいつは最近見かけなくなった。どうしちまったかなあ?」
おいおい。その辺に転がってるんじゃあないだろうな。
「かあちゃん(妻)とは離婚した。いいかい?若いの。
どんな馬鹿女だったとしてもかあちゃん(妻)はいたほうがいいよ・・・」
そう語る老人は哀しい目をしていた。
むう・・・深いな。
その日は暑くてなかなか寝付けなかった。
ふと窓の外に目をやると猫が交尾をしていた。
ちょっと邪魔をしてやったがかまわず続けていた。
むう・・・深いな。


水面を覗きこんだらヤドカリがうじゃうじゃいた。面白かったので夢中で
突っついて遊んでいたらシャツがぬれてしまった。潮が満ちたらしい。


まずは最初の目標として本州最南端の潮岬に向かった。
人気のない山道を延々と進む。


渋いなあ。この橋。


なんと!道端に見事なアジサイが!雑アジサイ?
こんな人気のない山道なのに誰が見るんだろうか。もったいない。

途切れたシャイニングロード

三重県あたしか温泉に向かっていた。
夕方には着くはずだ。さっそうと走る2CV。
 やたらと工事中が多い。何回も迂回させられる。
いかん!思ったより時間を食った。早くふろに入りたい。
それ!急げ〜ってあら!通行止めだ!
その道は完全にふさがれていた。
そう。この年には集中豪雨があったのだ。
土砂崩れらしい。仕方ない。また迂回か。
・・・一時間後、迂回路が存在しないことを知り、愕然とする。
左は海。右は山。通行止めになっていたのは
その間を通っていた唯一の道だったのだ。
今夜はふろには入れない。
ああ。頭がかゆくなってきた。
それどころじゃあない。本州最南端潮岬攻略は絶望的になった。
どうすりゃいいんだ〜?

時は世紀末

その日は失意のまま眠りについた。
明日は来た道を延々と帰らねばならない。
ぷ〜ん
一体何十キロ戻らねばならないのか。
ぷ〜んぷ〜ん
変な峠道に迷い込んだら・・・
ぷ〜んぷ〜んぷ〜ん!!
うるせえ!あ?ああああっ!!
足が腫れ上がっている。やられた!蚊だ!
しかも猛烈にかゆい。いや。痛い。ぐはっ!
これに比べたら長野県産の蚊は天使のようにかわいらしい。
真っ暗なところを選んで寝床にしたので蚊はまったく見えない。
ぷ〜んぷ〜んぷ〜んぷ〜ん!!!
しかも一匹じゃねえ!もはやこれまでか・・・
遠のく意識の中でノストラダムスの予言の一節を思い出した。
そうか。これが「恐怖の大王」か・・・

新たなる道へ

色々考えたが今回は本州最南端潮岬攻略をあきらめることにした。
目標はあくまで九州最南端佐多岬なのだ。まだ半分も来ていないんだから。
先は長い。


奈良の竹やぶ。
奈良・京都といえば神社・仏閣だが、
あそこは車で行くような場所ではないのでパス!


大阪の道頓堀。とても華やかなところ。


道頓堀で時間を食ったため、その日は寝床が見つけられないと思いきや
偶然にも静かな場所を見つけた。本当によく寝れた。
えっ?入居者以外立ち入りお断り?
うーん来た時は暗かったので分からなかった・・・
てへへ!


いよいよ四国に向かう!


瀬戸大橋を通過!


キャンバストップならではの光景。すごい橋だなぁ!


天気も良くて暑かった!


裏からも見たりして。

「恐怖の大王」光臨


「おお?これはいいところだ!」
車の通りが少なく、街灯もない。
地面は舗装されていない。草がぼうぼう生えている。
所有者が管理しているように見えない。
これは今までの経験からして一泊するには最高の場所だ。
舗装されていないところには暴走族がこない。
ということはたぶん警察もこない。
さっそく陣取って食事の用意を始めた。

ぷ〜ん
しかしこう暑いとさすがにご飯を炊くのがおっくうだ。
ぷ〜んぷ〜ん
でもここは静かだけあって店らしきものがまったくない。
ぷ〜んぷ〜んぷ〜ん!!
うるせえ!あ?ああああっ!!
腕が腫れ上がっている。やられた!蚊だ!
「また駄目なのか・・・」
この場所からは立ち去ろう。これじゃ寝られやしない。
良い場所だと思ったんだが・・・
今までの経験が通用しないことを痛感した。
おそるべし九州!(まだ着いてないって!)


この犬にサンダルを食べられてしまった。
生もちをあげたら全速力で追いかけてきた。(あげるなよ!)
うわぁぁぁぁ!逃げろ2CV!


同じく車で寝泊りしている旅人に遭遇。長話をしてしまった。
そういえば人間と会話するのは久しぶりだ。


ご休憩。


室戸岬に向かう。こういう道は左ハンドル車がいい。
海が良く見える。


室戸岬。驚くほど何もないところ。
柵もないのでほいほいと海際まで行けてしまう。
友人のころじ氏から電話がかかってきた。
こ「よお!今日暇かい?」
俺「暇だけど今四国。」
こ「なにぃぃぃ〜!!」


しまなみ海道。四国を後にする。


しまなみ海道は自転車でも渡れるのだ!
とはいっても半端な距離ではないのでちょっとだけ走ってみた。
ゆっくりと景色が楽しめる。


2CV写ってます。どこでしょう?


親切な方に遭遇。
親切「おや?旅人さん!この山を登ると夜景が綺麗よ!」
俺「いや・・・この車、坂道苦手なんで・・・」
親切「じゃあ乗っけていってあげるわ!」


うわあ!ホントに綺麗だ!この写真はあとで親切さんに送った。
このようにライトアップされるのは滅多にないことらしい。
この方はその後、寝るのに最適な駐車場まで案内してくれた。
ただただひたすら感謝である。


さようなら四国。


広島県の錦帯橋。世界遺産ですぞ!


山口県。いよいよ九州は目前だ!


下関。ついに九州上陸!


暑いよ!すだれトップじゃなかったら死んじゃうよ!


激シブな橋を見かけた。
川も超キレイ!ちょっと降りて休憩した。


ちょっとオイル交換をした。
2CVはオイルを換えると調子が良くなる。


日南海岸に到着。景色がいい事で有名なので楽しみにしていた。
ところがこの日は前が見えないほどの暴風雨!


鬼が洗濯したんだって。俺も洗濯しようかな。


・・・とにかくこんな天気のまま日南海岸を通過したくない。
早めに寝てしまうことにした。晴れるまでここで暮らそう・・・


そして雨はやんだ。


がはは!晴れてきたぞ!


ここには誰もいなかった。こんなにいい場所なのに。


どこまで走ってもこんな光景が続く。これが日南フェニックスロード。


すだれ全開で突き進む。


海もきれいだよ〜!


いよいよ折り返し点である九州最南端の佐多岬が近くなってきた。


おっと?サルだ!野良サル?


はい!ゴール!
やったー!やったー!


これを見たとき、「ついに到着したんだなぁ!」と、実感した。
出発からここまでの走行距離は2427キロ。


それじゃー帰るぞ。


それにしても綺麗な海だ。
やっぱりこの辺に住んでいる方々には普通なんだろうか・・・


桜島。ものすごい貫禄がある。


桜島噴火の火山灰により埋まってしまった鳥居が保存されていた。


熊本県通詞島。一本の橋で行かれる島である。
この場所からは・・・


これは夕焼け。


これは朝焼け。
ひとつの場所から両方を拝めた。
お得な島だね!ありがたや〜ありがたや〜!


暑い!暑い!この場所でひと泳ぎした。魚がはねていた。
しかし、手が血だらけになった。なんじゃこりゃぁ!岩が刺さった!
だから遊泳禁止なのか!(泳ぐなよ!)


長崎県雲仙普賢岳。一目見ただけで「はっ」とするほどの
威圧感がある。


関門トンネルを通って九州を後にする。
さよ〜なら!


山口県。2CV好きな青年に追い掛け回され、ついには追いつかれてしまった。
旅の途中だと告げると「会えてうれしいです!」とのことだがこちらもうれしい。
住所と名前を聞いておけばよかった。この写真を送りたいのに。
だれかこのひと知らない?


滋賀県琵琶湖。九州のきれいな海に見慣れたからか、ちょっと汚く見えた。


道の駅で一泊。とにかく暑くて体力は限界に近かった。


あまりの暑さにくらくらしているときに見つけた石川県日本自動車博物館。
自動車大好き!元気復活!


あっ!お仲間だ!


この日は記録的猛暑で気温は36℃。
外に出ると暑さが衝撃波のように体にぶつかってきた。
長野県育ちの私には未体験の暑さ。


ここから長野県を目指し、海とはお別れ。
旅の最後を飾るにふさわしいすばらしい夕日が。ステキー!


おうちに着いた。わーい!

20日間の旅だった。
出発からの走行距離は4320キロ。
にもかかわらず、今回はほぼノントラブル。
かっこいいね!2CV!