長野県におけるレクリエーション運動 

「地域が家族になるために」

長野県レクリエーション協会
理事 犬飼己紀子

レクリエーション運動は、時代における社会的課題に取り組む「市民サービス」型事業として、社会的便益を生むことをその使命として展開するものです。
現代は子どもの育つ環境を阻害する様々な要因が社会問題化して取り上げられています。いじめや虐待・子どもを巻き込んだ事件・事故、また、家庭における子どもの生活リズムの変化など、健康な子どもの育ちに重要な環境要因の変化は、二次的問題として子どもの体力低下を引き起こし、生活習慣病の懸念や社会性の未成熟・心の不安定など様々な問題を引き起こしています。
 このような中、子どもを地域で育てようという動きが生まれています。元気な子ども達が生活する空間は、地域の人々の生活の活力となり、次代への期待を保障するものです。日本レクリエーション協会では2007年度から文部科学省からの委託を受け子どもの体力向上のための【元気アップ親子セミナー】をはじめとした様々な事業を展開しています。長野県レクリエーション協会においても他県に先駆け、2008年度より継続して「子どもの元気アップ」をサポートする指導者育成に当たっています。
2000年に介護福祉士養成課程にレクリエーション援助技術が取り込まれて以来、福祉レクリエーションをそのテーマとして取り込んできたレクリエーション運動が、いま、次代を担う子どもたちの健康な育ちに本腰をすえ取り組み始めたといってよいでしょう。しかし、高齢者福祉の現場と大きく異なるのは、乳幼児から児童期にかけての養育支援については、子育て支援政策として声高に叫ばれていてもいまだ職域としては確立されていないという点にあります。 
 家族形態の変化に伴い、母子が孤立する傾向が進んでいます。日中母子二人で過ごす時間のストレスが健康な母子の関係すら不安定なものにしています。また近年では女性(母親)の就労に期待がかかる中、肉親(大切な大人)との接点に恵まれない子どもの心は、居場所を求め愛着・信頼といった人として生きる力を育てる大切な時期の保障すら阻害される状況にあると考えられます。

 子どもにとって家庭は最大の育ちの環境です。子どもの育ちは家庭から切り離して考えることはできません。これまで「核家族化」「単身赴任」など、その単位を小さくしてきた家族です。子どもの育ちにとって「家族」という単位が欠かせないとしたなら、レクリエーション運動で家族を拡大させるという発想はできないでしょうか。子どもの健全な発育発達を社会的課題と捉え、「家庭を育むのは地域」その地域が家族となって支援の輪を広げていく地域運動をレクリエーション運動として展開して行こうと考えました。


レクリエーション・インストラクター資格講座と社会的便益

 長野県レクリエーション協会では、毎年「レクリエーション・インストラクター資格講座」を開設しています。2007年度開講からは、「遊びで育む子どもの育ち」をキーワードに講義内容、現場実習を組み立て実施してきました。
 図1は
19年度受講者に向け、初回講座と最終講座で行った【社会的行動評価スケール】の比較結果からその差異を現したものです。

平成19年度「長野県レクリエーション協会・レク・インストラクター資格講座」

   初回 平成196月  日 調査 「社会的行動評価スケール」

   最終 平成191125日 調査 「社会的行動評価スケール」と「質問紙」

   (受講者総数   名・ 初回及び最終回の回答比較有効者数42名)

表1から、講座受講開始時の動機としては「職場でのレクリエーション援助に生かす」といった動機が約半数を占めていることがわかります。毎年開催している【レクリエーション・インストラクター資格講座】は、すでに県内に2000人の有資格者を生み、毎期の受講者のネットワークもできているところです。今回はその学習効果がもたらす受講者個人の変化を社会的行動評価のスケールにあて、その効果を導き出してみようと考えました。
  講座開始にあたり、受講者の社会的行動を「基礎生活・対人関係・ゆとり・知的関心」の項目別に因子分析法で回答を得、それぞれに総合点を算出し行動別に表してみました。
 図1は、全体の平均値を表に表したものです。
 
各項目で受講後の行動評価が高くなっていることが分かります。それぞれの関心事が明確になり講座の受講により、個人の行動がより具体的に意識化されたことが伺えます。

職場に生かす

15人

資格を取る

5人

自主活動に生かす

8人

興味があったから楽しそう

4人

仲間に誘われて

8人

その他(上司のすすめ)

2人

表1.講座受講開始時の動機


 表2は、終了時のアンケートにおいて【現在の関心事は何ですか】の問に、自由記述で回答を得たものです。
 子どもの育ちに関する関心の項目が多く見られます。表
1に見られる開始時の動機と比較すると「資格取得のため」「職場での活用」といった動機に変わり、より具体的な行動に繋がるものとしての意識に変化し、ここでもレクリエーション資格講座の受講がレクリエーション運動に向けたマンパワーの養成に繋がっていることが見て取れます。

子ども関連

親と子の心理・コミュニケーション

地域でレクと世代交流・村内レクスタート

子どものいじめ・子どもの生活環境に自分に何ができるか

子どもの遊び場にレクを・自分の得意をどう生かすか

ボランティア            等

16回答

職域その他

学びを生かす具体的場面・さらに上を目指し勉強を

仕事・人間関係・ 

趣味を進める・社会動向に活動を生かす

加齢と自分・親の介護

ホスピスについて・         等

14回答






















 表2.【終了時アンケート】「あなたの現在の関心事は何?」 自由記述

高齢社会への進展がますます高まる中、団塊世代が地域で生きる活路として、また全国で展開され実績を挙げている「プレイパーク」等での若者の雇用といった職域としての環境づくりに向けた運動展開など、課題は限りありません。
 レクリエーション運動が、その成果を利益に求めるという企業体とは異なる特性からして、運動体の社会的有益性を実践者に示していくことが、何よりの活動の後押しに繋がると考えます。今回の結果は長野県内のレクリエーションに携わる会員にとって、それぞれの活動の弾みとなることを期待します。
 今後もレクリエーションを通じた社会運動の展開を使命として、今「地域で子どもの安全で安心して過ごせる場つくり」への意識の啓蒙を進めていきたいと思います。
 最後に、平成19年度長野県レクリエーション協会『レクリエーション・インストラクター資格講座』に関わったすべての皆様へのご協力に心より感謝いたします。

                                平成19年度長野県レクリエーション協会主催  
                   
       「レクリエーション・インストラクター資格講座」
                          
   修了者の社会的行動スケールからその効果を読み取る 
                                                     
平成20年7月21日
                                             
文責 松本大学 犬飼 己紀子 

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