新 訂
尋 常 小 学 唱 歌

                              第五学年用

    ☆歌詞別掲の曲・・・・・・・・・・別ページ
みがかずば
  みがかずば 玉もかがみもなにかせん。 まなびの道も かくこそありけれ。
金 剛 石
  金剛石もみがかずば、玉のひかりはそはざらむ。
       人も学びて後にこそ、まことの徳はあらはるれ。
  時計の針のたえまなく めぐるが如く、ときのまの
       日かげをしみて励みなば、如何なる業かならざらむ。

水は器
  水はうつはにしたがいて、そのさまざまになりぬなり。
       人はまじはる友により、よきにあしきにうつるなり。
  おのれにまさるよき友を えらびもとめて、もろ共に、
       こころの駒にむちうちて、まなびの道にすすめかし。

     
八岐の大蛇
 1.めぐらす垣根、門八つ造り、その門毎に桟敷しつらへ、
       桟敷一つに酒槽一つ、その槽槽に酒をぞ満てたる。

 2.八岐の大蛇近づき来たり、その門毎に頭さし入れ、
       頭一つに酒槽一つ、酒飲み飲みて酔ひてぞ臥したる。

 3.尊は立ちて、今こそ時と、その御佩の剣引抜き、
       一つ一つに、尾頭八つを 切捨てませば、流るる血の川。

 4.年毎、人を、来て取食ひし、その醜大蛇ここに滅びて、
       尾より出でたる御剣一つ、我がすめろぎの寶とたふとし。
鯉のぼり
 1.甍の波と雲の波、重なる波の中空を、
       橘かをる朝風に、高く泳ぐや、鯉のぼり。

 2.開ける広き其の口に、舟をも呑まんさま見えて、
       ゆたかに振るふ尾鰭には、物に動ぜぬ姿あり。

 3.百瀬の滝を登りなば、忽ち竜になりぬべき、
       わが身に似よや男子と、空に踊るや、鯉のぼり。
朝日は昇りぬ
 1.朝日は昇りぬ、日は出でぬ。海には、帆綱をたぐり上げ、
       追手に帆あげて船出する 海士人今や勇むらん。

 2.朝日は昇りぬ、日は出でぬ。山には、子牛を追ひながら、
       朝露踏分け登りゆく 少女の歌や高からん。

 3.朝日は昇りぬ、日は出でぬ。町には、工場の笛鳴りて、
       今しも薄らぐ朝靄に、機械の音や響くらん。
21 冬 景 色
 1.さ霧消ゆる湊江の 舟に白し、朝の霜。ただ水鳥の声はしていまだ覚めず、岸の家。
 2.烏鳴きて木に高く、人は畑に麦を踏む。げに小春日ののどけしや。かへり咲の花も見ゆ。
 3.嵐吹きて雲は落ち、時雨降りて日は暮れぬ。若し燈のもれ来ずば、それと分かじ、野辺の里。
24 三 才 女
 1.色香も深き紅梅の 枝に結びて、勅なればいともかしこし、鶯の問はば如何にと、
       雲ゐまで 聞え上げたる言の葉は、幾代の春かかをるらん

 2.みすのうちより、宮人の袖引止めて、大江山いく野の道の 遠ければ文見ずといひし
       言の葉は、天の橋立末かけて、後の世永く朽ちざらん。

 3.きさいの宮の仰言、御声のもとに、古の奈良の都の八重桜
       今日九重ににほひぬと、つかうまつりし言の葉の 花は千歳も散らざらん。
(この項「尋常小学唱歌第五学年」)