もう遥か殆ど消えかかった記憶の中からかすかに聞こえて来るこの詩を聴いたのは、確か北朝鮮の熙川にいた小学校2,3年生のやがて冬になろうとする秋の夕暮れの頃である。ラジオの放送劇は何か少年にまつわる淋しい物語であったと思うが、かじりついてしかと聴いたわけではない。
しかし雑音の中からバックミュージックとして私の耳に入って来たのは「出た出た月が」の歌詞をひっくり返して歌う劇中の数人の少年達の合唱であった。歌詞を逆さに読んで歌うのにどういう意味があったのか分からないが、何か哀調を帯びてひしひしと胸に迫って来たことだけは今でもはっきりと思い出すことが出来るのである。 |